○幼少~学生時代についてお聞かせ下さい。
いつも外に出かけて遊んでいるような、活発な子供でした。学生時代はサッカーに夢中で、中学・高校・大学をとおして、サッカー部のキャプテンを務めていました。抜きん出て強いチームという訳ではありませんでしたが、その中でどれだけ強いチームにしていくかを考えるのが楽しかったですね。
高校卒業後は、ハワイの大学へ入学。英語とビジネスを学べると考えての事でした。約2年後には、ラスベガスの大学へ編入。在籍していたホテルマネージメント学科の関係でカジノを訪れ、そこで車いすの高齢者が優雅にギャンブルを楽しんでいる姿に衝撃を受けました。実は、僕が生まれる前から父は進行性筋ジストロフィーを発症、この頃にはもう首から下の運動機能を全廃し、車いす生活だったんです。父は総合ヘルスケア業の会社を経営していましたが、僕にとって介護や医療という世界はとても暗い印象で、まったく魅力を感じていませんでした。しかしこのカジノの光景を目の当たりにして、父は日本の介護や医療を、清く暗く貧しい世界ではなく自分の時間を最後まで謳歌出来る、そんな日本に変えたいのではないかと思い至りました。この“常識を変えるビジネス”に興味が湧き、カジノを後にしてすぐ父に電話をかけ、「仕事を手伝わせて欲しい」と頼みました。
○社会人(サラリーマン)時代についてお聞かせ下さい。
父に弟子入りするため、大学を中退して帰国。父に初めて頭を下げ、「ビジネスを教えてほしい。ただ会社を継ぐ気はない。3年で学んで独立する」と生意気な言葉で頼みました。父はそれを「生意気やけどおもろいな」と感じたらしく入社試験に合格(笑)その後総合ヘルスケア業の世界に飛び込み、多くの事を学びました。
しかし社長の息子として働くことに必要以上のプレッシャーを覚え入社1年後のある日、家も会社も捨てて逃亡。車で若狭湾から東北方面へと現実逃避をしながら出ていき、悶々としていました。しかし途中で原点に戻り「親父の下で修業したいと言ったのは俺だ。プレッシャーがあることも分かっていたのに、こんなことではだめだ」と改めて気づいたのです。そして会社へ戻り、それからは社長の息子という目で見られることを気にせず、息子だからこそできる仕事・立てるポジションをフル活用し、仕事を進めていきました。26歳の時、父の作り上げた常識を変えるビジネスと、日本の総合ヘルスケア業に大いなる可能性を感じ、本格的に父の後を継ぐ決心をしました。そしてまずは取締役に就任し、これまでの目の前のビジネスだけではなく会社の経営を父から教えてもらいました。2014年2月、父は進行性筋ジストロフィーによる呼吸不全で他界し、その後代表取締役に就任しました。
○経営者としての喜びや苦労についてお聞かせ下さい。
経営者は意思決定の最終者ですから、成功も失敗も自分の責任で、そこがとても難しくて面白いですね。
以前に父と共著で「脳から血~でるほど考えろ!!」を出版したのですが、その時に近畿、中国地方の約400件の書店へ挨拶回りをしました。その中で僕たちの想いに共感してくれた紀伊國屋書店 本町店の佐藤店長が「春山 満コーナー」を大きく設けてくださり、本だけではなく当社のオリジナル商品まで置いていただきました。今ではそのコーナーが話題を呼び、紀伊國屋書店8カ所で展開を続けています。
この一連の流れが400分の1だと考えると無駄が多いと思う方もいるかもしれませんが、この一つを開けることによって新たな可能性を創り出す事ができると、僕の自信となり、励みにもなり、喜びを感じます。
○今後の社長自身の目標をお聞かせください。(プライベートでも構いません)
既に超高齢社会に突入している日本では、4人に1人が65歳以上です。介護問題と言えばこの65歳以上の方だけがフォーカスされますが、僕は間違っていると思います。なぜなら、その方々を支える家族の存在が無視されているからです。当社では創業以来の理念「共に暮らしあう調和」を掲げ、ご高齢の方だけでなくその家族を支えなければ日本は持たないと思っています。そこで家族の絆を深めるための「グッドタイム トラベル」と題した“新しい家族の旅”を旅行事業として立ち上げました。この旅行をとおして介護を必要としている方と、その家族が絆を深めるきっかけを作ってもらうことを目標としています。
○御社の仕事の魅力と苦労をお聞かせ下さい。
当社では常識を変えていく、そんな仕事が魅力だと思います。例えば介護とエンターテインメントは全く無関係のように思われるでしょうけれど、なぜ年を重ね高齢になるとエンターテインメント性が失われるのでしょうか。こうした常識の裏の非常識を訴え続け、お客様に選ばれる商品やサービスを考え提供する事が、とてもやりがいがあり面白いと思っています。また、苦労という事は考えないようにしています。なぜなら仕事というのは、苦労の連続です。それをいちいち苦労と思っていたら何も前に進みません。難しいからこそやりがいがある、僕はそう感じています。
○御社の強みをお聞かせ下さい。
当社の製品は、値引きをしません。それだけ製品に自信があるからです。いいものを作ろうとすればお金がかかります。そして適正な利益が出ないと事業は継続できません。当社の製品は高付加価値・高価格をモットーに、試作を重ねて質の高い製品を開発しています。そのお喜びの声が当社のリピート率につながっています。
○今後、どのような人材が欲しいかをお聞かせ下さい。
志のある人。またどんなに仕事がつらくても最低でも3年は頑張って乗り越えられる、粘り強い人がいたら一緒に仕事がしたいですね。
○会社の理念と今後の目標を教えて下さい。
当社には大きく二つの理念があり、一つ目は「共に暮らしあう調和」です。介護者と被介護者との調和を意味し、介護される方だけでなく、介護する方の立場も考えた商品やサービスの提供を大切にしています。もう一つは「望まれていながら提供されていなかったものを提供する」です。新事業である旅行サービスもこの考えに基づいたものです。例えば“旅行には行きたいけど、体が不自由になればもう無理だろう”と考えがちですが、こうした潜在的な諦めを払しょくし、喜びと満足を提供していくことが当社の使命でもあると考えています。
この二つの理念を掲げ日本の介護・医療を変える事を目標としています。
○日本を背負う若者へのメッセージ
何事も日本を中心に考えないことです。日本は世界の片隅にある小さな一つの国にすぎません。また世界の常識と日本の常識は随分違います。海外の事をよく勉強し、世界的な視点を養ってください。留学が無理なら、旅行で現地の空気を吸って町を歩いてみるだけでも随分得るものはあるでしょう。
もう一つ、ガマンすることの大切さを知ってほしいですね。つらいからと言ってすぐに諦めてしまっては、何も得られません。我慢して継続することで必ずチャンスが回ってきます。ただそれをつかめる人は諦めずに頑張った人だけでしょう。仕事というのは努力をしたら認められるものではなく、結果を出した人間だけが、努力を認めてもらえるものです。